誰に頼めばよい?
相続の発生に伴い行わなければならない手続きは、非常に時間と労力を要するものが多く、一般の方がそのすべてをご自分で行うことはなかなか難しいと思います。また、手続きの中には、複雑かつ法律的な知識を要するものもあります。そこで大半の方は、相続に関わる諸手続きを専門家に依頼することが多いと思います。
相続に関連する手続きを進めるにあたって、関わりのある専門家としては、一般的には①司法書士、②税理士、③弁護士が考えられます。
①司法書士 | 登記の専門家。 相続財産の中に不動産が含まれる場合に、その不動産を取得した人が名義を書き換えるために登記申請を依頼することになります。 |
②税理士 | 税務申告の専門家。 相続した遺産の総額が多く、相続税の申告が必要な場合に、申告手続きを依頼することになります。 |
③弁護士 | 法律事務全般の専門家。 特に紛争を解決する必要がある場合に依頼することになります。たとえば、遺産分割協議において相続人間でトラブルになった(なりそうな)場合などです。 |
このように、相続に関連する手続きにおいては、それぞれの手続きに応じた専門家が存在するため、まずはどこに相談に行ったらいいのか、お悩みになる方も多いかと思います。
そこで、まず、どこに相談に行こうか迷われた場合の目安として、いくつかのポイントをご紹介いたします。
1.遺産分割でもめることが予想できる場合
まず、相続が発生した時点で、すでに遺産分割の話し合いがもめることが予想される場合です(他の相続人と疎遠で話し合い自体ができない場合も当てはまります)。
この場合は、あまり選択の余地はなく、最初から法律事務所(弁護士の事務所)に相談に行くべきだと思います。
司法書士や税理士は、職域上、根本的には紛争を解決することはできず(調停等、裁判手続は利用できない)、結局、弁護士を紹介されることになるからです。また、遺産分割の紛争が解決されない限り、相続に関連するその他の手続は、ほとんど進めることができません。したがって、遺産分割でもめることが予想される場合には、まず遺産分割についての紛争を解決しなければならず、その相続における手続きは弁護士の主導で処理を進めることになり、その他の手続きは紛争が解決した段階で処理していくことになります。
なお、経験上、遺産分割のトラブルは、遺産の金額の多寡に関わらず発生しますので、ご注意ください。
2.相続税の申告が必要な場合
遺産の金額が多い場合には、相続税を納める必要があり、相続税の申告をしなければなりません。相続税の申告が必要な相続においては、手続きのメインは相続税の申告手続となり、相続手続の処理は税理士を中心に進めていくことになります。そこで、まずは相続税の申告の必要性の有無を判断するためにも、最初に税理士の事務所に相談に行くことをおすすめいたします。
相続税の申告をする可能性があるかどうかの判断は、遺産の総額が相続税の基礎控除の額(3,000万円+相続人の数×600万円)を超えるか否かがポイントになります。もちろん、一般の方が遺産の評価額を正確に計算することは難しいと思いますが、ざっと計算して明らかに下回る、明らかに上回る、ぐらいの判断はできると思います。
3.遺産に不動産が含まれる場合
遺産に不動産が含まれる場合には、遺産分割で不動産を取得した方の名義に書き換える必要が出てきます。そこで、遺産をめぐるトラブルもなく、相続税の申告をする可能性もなさそうな場合には、司法書士の事務所へ相談に行くと良いと思います。司法書士の事務所では、主として不動産の名義書換を行いますが、その手続きの一環として戸籍の収集や遺産分割協議書の作成なども併せて行ってくれる場合がほとんどです。
以上はあくまで、どこに相談したら良いか困った際の目安に過ぎません。従前からつきあいのある専門家がいれば、とりあえずそこに相談に行かれてもいいでしょうし、多少の手間を惜しまないならば、いくつか相談に行かれることも良いと思います。
また、ほとんどの専門家は他の専門家と繋がりをもっているため、自分の職域以外の業務をする必要が出た場合には、その業務を行う専門家を紹介してくれることが多いです(たとえば、司法書士に相談に行ったら相続税の申告が必要なことが判明したため、税理士を紹介してもらう場合など)。また、ワンストップサービスをうたっている事務所では、事務所内に各専門家が在籍し、必要に応じてそれぞれの手続きを行ってくれます。
したがって、何も考えずにとりあえずどこかの専門家の事務所に相談に行けば、最終的にはなんとかなるとも言えます。しかし、最初からご自分の相続手続きにとって、もっとも適切な事務所へ相談に行った方が余計な手間がかからず、その後の手続きがスムーズに進んでいく可能性も高く、お客様にとってのメリットも大きいものと思われます。