神奈川県・藤沢市の弁護士吉田法律税務総合事務所

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遺産分割

遺産分割協議

被相続人が残した遺言書が存在しない場合、相続人間で話し合いをして遺産の処遇をどうするかを決めなければなりません。
これを遺産分割協議といいます。

特別の形式が必要というわけではなく、要は、相続人同士で話し合って遺産の処遇を決定すればよく、相続人全員が一堂に会する必要はありませんし、電話で話し合ってもかまいません。また、いつまでに分割協議をしなければならないという時期的な制限もなく、遺産の一部についての分割協議も可能です。したがって、処遇を決めたい財産についてのみ分割協議をして、他の財産については先送りにするということも可能です。

ただし、相続税の申告が必要なケースでは、いくつか制約があるので注意が必要です。遺産分割協議は、相続人全員の同意がなければ成立しません。何らかの事情で相続人のうち一人でも内容に同意しなかったり、協議ができない相続人がいる場合には、調停等の裁判所の手続きを利用して解決することになります。

法定相続分と遺産分割協議

民法では、各相続人が相続できる権利について一定の割合が定められています(民法900条)。
これを法定相続分といいます。

これは、遺言書が存在しない場合や、相続人間で遺産分割協議が整わない場合(協議ができない場合を含む)の相続分の権利を法律で定めたものです。この法定相続分に従う限り、必ずしも遺産分割協議は必要ありません。ただし、この法定相続分は分割の割合を定めたものなので、遺産分割協議をしないと、あらゆる相続財産を法定相続分に応じた割合で取得することになります。

たとえば、相続人が配偶者(1/2)と子が二人(各1/4ずつ)の場合で、相続財産として預金2,000万円と不動産(評価額2,000万円)があった場合、預金については配偶者1,000万円、子は各500万円、不動産については法定相続分での共有となります。これを、配偶者が不動産全部を取得し、子らが預金をそれぞれ1,000万円ずつ取得する、というように分けようとする場合、内容的には法定相続分に合致するように分けていても、各財産を単純に法定相続分の割合で取得するのとは異なりますので、遺産分割協議が必要となります。このように法定相続分での遺産の相続は実際には制約が多いため、ほとんどの相続において遺産分割協議を行うことになり、法定相続分はそれぞれの相続人が取得する財産の分量を決めるための目安として機能することになります。また、家庭裁判所の遺産分割調停等では、法定相続分が基準となります。
法定相続分を無視した遺産分割も、相続人間で合意する限り全く問題ありません(合意を形成する過程で他の相続人から脅迫されたとか、だまされたということがもしあった場合は、合意自体が無効となり得ます)。たとえば、夫が亡くなり妻と子が相続人という場合、残された妻の今後の生活もあるので、とりあえず妻が遺産の全てを相続する、というケースはよくあります。これは配偶者100%、子が0%という割合で遺産を分割したということで、相続の放棄(民法939条)とは異なります。
このように、相続人間で合意ができる限りは、かなり柔軟に遺産分割の方法を決定できます。実際には、各相続人のおかれている生活状況や、亡くなられた方との生前の関係性などによって相続人間で差をつけるなど法定相続分にとらわれない割合で分割の方法を定めることの方が一般的です。特に遺産が多くある方の場合は、遺産の分け方を決める際に、さらにその先の相続も視野に入れて考えることができると相続税対策にもなると思います。

遺言と遺産分割協議

遺言がある場合には、基本的には遺言に従うことになるので、遺言の対象となっている遺産については、遺産分割協議をする必要はありません。
この場合に、遺言書の内容を無視して遺産分割協議により財産を分けることができるかどうかですが、遺言執行者が定められていない遺言の場合は、相続人全員(受遺者も含む)の同意がある限りは、遺言書に記載された内容と異なる内容の遺産分割協議も有効とされています。

また、遺言執行者が定められている遺言の場合でも、相続人全員(受遺者も含む)の同意と遺言執行者の同意があれば有効と考えられています。ただし、遺言執行者の職務は遺言の内容どおり執行することにあるため、遺言執行者に同意してもらうためには、特別な事情がある場合に限られると考えられます。

未成年者と遺産分割協議

法律上、未成年者は単独では有効に法律行為をすることはできず(民法5条)、同様に相続人が未成年者の場合は、単独では遺産分割協議をすることはできません。そして、一般に未成年者が法律行為をする場合、通常は親権者が代理権あるいは同意権を行使するのですが、遺産相続時はほとんどの場合、親権を行使すべき親自身も相続人となっているため、共同相続人の一人である自身の立場と未成年者である相続人の代理人(親権者)としての立場の利益が衝突してしまい(利益相反行為)、親権者として子の親権を行使することが禁止されます。

そこで、未成年者にかわって遺産分割協議を行う者が別に必要となるため、特別代理人を選任してもらう必要があります(民法826条1項)。この特別代理人になる人は、相続人でなければ基本的に誰でもよく、弁護士や司法書士といった法律の専門家が就任することもありますが、祖父や祖母に就任してもらうケースがよくあります。また、特別代理人は、未成年の相続人が複数いる場合は、未成年者ごとにそれぞれ選任しなければなりません。複数の未成年者全員の代理人として一人ということは認められていません。

このように相続人の中に未成年者が含まれている場合は、そのままでは遺産分割協議を進めることはできず、手続きに大変手間がかかります。

成年後見制度と遺産分割協議

「後見制度」のページで解説しています。

遺産分割協議書の作成

遺産分割協議がまとまったら、その内容を記載した遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議自体は口頭でも成立し、必ずしも書面の作成が義務づけられているわけではありませんが、後に遺産分割の内容をめぐってトラブルにならないように証拠として残しておく必要があることや、相続に関するほとんどの手続きで遺産分割協議書の提出を求められますので、事実上協議書の作成は強制されているといえます。

協議書自体の形式に特に決まりはありませんが、最低限、協議が成立した日付、どの相続人がどの財産を取得したか特定できるように記載する必要があるでしょう。また、協議書は1通である必要はなく、財産ごとに作成したり、同一内容の協議書を相続人の人数分作成し、それぞれの相続人が署名押印するという形でも作成することができます。昨今では書式のひな形が出回っていますので、それらを参考に作成されると良いと思います。